〈コラム〉理想の自動車燃料

 

〈一長一短〉

 

20XX年、この世の中で使われている自動車燃料は2つある。1つは、水素。もう1つは、電池である。

 

しかし、そのどちらも一長一短があり国民からの評判はあまりよくない。

 

水素は、1回の充填時間が短く長距離走れるという利点がある。

水素ステーションに行き、自動車に装置をセットすればあとは自動で水素を充填してくれる。

充填時間は2~3分。あっという間だ。

そして、一度充填すれば600~700km走行できる。東京-大阪間を一度に行ける航続距離で、日常生活にはなんの支障もない。

 

その点、電池は使い勝手が悪い。

電池はフル充電するのに20~30分かかる。急いでいるときに、電池が切れそうになったりしたときなんか最悪だ。

充電ステーションに車をとめて、近くの喫茶店で暇つぶしをするが、その間イライラが止まらない。

 

「昨日の夜充電しとけば、、」いまさら後悔しても手遅れである。

そのくせ1回あたりの航続距離が短い。

フル充電しても150~200kmしか走れない。

こまめに充電していれば日常生活で困ることはあまりないが、ちょっと遠くへ出かけようとすると、とたんに心もとなくなる。

 

じゃあみんな水素自動車を使えばいいじゃんと思うが、そうもいかない。

いかんせん水素は扱いが大変だ。化学的に安定していないので、下手すりゃ爆発。

水素ステーションも自動車も安全設備にお金がかかるため、水素自動車は初期費用もランニングコストも高い。

 

なかなか庶民には手が届かないのである。

 

 

〈画期的発明〉

 

そんなとき、ある科学者が画期的な発明をした。

水素に少量の炭素を混ぜることで、燃料を化学的に安定させようという試みだ。

 

実験はうまくいった。

その燃料は、常温では液体で、容器に入れて簡単に持ち運びできる。

1回の充填で800km走行することができ、かつ充填時間は2~3分程度である。

化学的に安定しているため、大げさな安全装置などいらない。

燃料充填ステーションも自動車も簡素化され、自動車を持つランニングコストは劇的に下がった。

おかげて、地方などでは1人1台自動車を持つことが当たり前になった。

 

人々はその燃料今世紀最大の発明として迎え入れ、発明した科学者は大金持ちになった。

 

科学者はその燃料を「ガソリン」と名付けた。